においの感じ方は、人により大きく異なります。察知するにおいの強さや、好き嫌い、印象はもちろんですが、感知するか・しないかですら、人によって異なります。
「他の人は何も感じないのに、自分だけが気になるニオイがある」
「みんなが感じるニオイなのに、自分は全く気にならない」ということもありますよね。
嗅覚は本当に不思議です。ただし、何らかの疾患などのトラブルが隠れている場合もあります。
自分だけニオイがわからない場合
「みんなが感じ取るニオイなのに、自分だけがわからない」という場合に考えられるのは以下のパターンです。
・病気などによる、鼻の炎症
アレルギーや副鼻腔炎のほか、通常の風邪などにより鼻の炎症が起こると、においが感じられなくなります。
現在、世界で猛威を振るっている新型コロナウイルスに感染した場合も、この症状が表れるようです。
鼻の中の炎症により、におい物質が臭いを感じる細胞まで届かないことや、臭いを感じる細胞自体がダメージを受けるためです。
風邪などの症状が治ったあとでも嗅覚障害だけは長引くことが多いため、その状態が続くようであれば注意を。必要に応じて医療機関を受診しましょう。
・脳に何らかのダメージがある場合
嗅覚は脳とダイレクトにつながっているため、損傷や疾患で脳神経にダメージを受けた場合、ニオイを感じなくなることもあります。
また、認知症の初期症状として、においを感じなくなることもあります。
最近、ニオイがわからなくなったという場合、風邪など一時的なものでなければ、認知機能に問題が出てきたことも考えられます。早めに対処しましょう。
・自分だけがわからないのが自分のにおい
普段、自分の周りにあるニオイには、嗅覚が順応して(慣れてしまい)、感じにくくなります。
詳しくはこちらの記事を参照してください。
・特定のニオイ成分を感じない人もいる
炎症などの異常がなくても、特定のニオイ成分を全く感じない、または弱くしか感じない「特異的無嗅覚症」ということがあります。
いくら強いニオイであっても特定のニオイ成分は感じ取れないけども、他のニオイは普通にわかるのが特異的無嗅覚症の特徴です。これは先天的なもので、ニオイ成分を察知する「嗅覚受容体」のうち、特定のものが機能していないためです。
これは実は意外とよくあることで、例えばワインのテイスティングで複雑なニオイ成分を嗅ぎ分ける際に、周りの人が感じ取ったニオイが自分だけわからないという場合は、そのニオイに対して特異的無嗅覚症であるといえます。
極端な例としては、ビール・チョコレートに含まれる、焦げたような甘酸っぱいニオイの「イソブチルアルデヒド」は、3割以上もの人がニオイを感じません。
その反面、特定のニオイ成分にのみ敏感な人もいます。その場合は不快なニオイと捉えることが多いと言われています。
例えば、トリュフや男性の汗に含まれる「アンドロステノン」は、全く感知しない人がいる一方、感じ取ることができる人は甘く良い匂いという印象を持つ人もいます。さらに、敏感な人は、アンモニアに似た不快な印象を持ちます。
同じニオイであっても、人によってこれほど印象が異なるものもあるのです。
注意したいニオイ
足のニオイ成分「イソ吉草酸」・ワキガの臭い成分「3-メチル-3-スルファニルヘキサン-1-オール」・加齢臭「ノネナール」についても、ニオイを感じないという人がまれに存在します。
他人の足やワキのニオイが今まで一度も気になったことがない!という場合は、遺伝的にこれらが感じられないという可能性も。
不快な足のニオイやワキガのニオイを感知せずに済むなんて良いなぁとも思えてしまいますが、自分がこれらのニオイを発していてもわからないことがある、と考えると恐ろしいですね。
心配であれば、ニオイを測定してくれる商品などを利用して、客観的に判断しましょう。
自分だけが気になるニオイ
他の人は気にならないのに、自分だけニオイが気になるという場合もあります。
・自臭症(自己臭症)
自臭症(自己臭症)とは、実際には臭くないのに、自分が不快な臭いを発していると思いこむ心の問題です。
自臭症の場合、においがしないのににおいを感じる「幻臭」の症状が出ることもあります。
詳しくは、こちらの記事でご紹介しています。
・一度覚えたニオイは感知しやすくなる
私たちは、ニオイを嗅いで一度覚えると、そのニオイに対して敏感に感じ取るようになります。
特に、不快な印象の臭いであるほどその傾向が強くなるため、一度不快に思った臭いは、ずっと鼻につくようになります。弱いニオイで、他の人は気にしないのに自分だけ気になる・・という場合はこのためかもしれません。
・その他
・本能的に合わない異性の臭いが気になる
・人の好き嫌いや関係性によってニオイの感じ方が変わる
・特定の匂いに対して敏感で、苦痛に感じたり頭痛を起こす「嗅覚過敏」である
まとめ
ニオイの感じ方は人によって異なります。本能的なものや感情も影響されますが、特定のニオイを感じない・特定のニオイに敏感な人も存在します。
ただし、以前はそうではなかったのに最近においがわからないという場合は、何かの疾患や体のトラブルの可能性もあるので、医療機関に相談しましょう。
ニオイが感じられないと、食べ物の味がわからなくなります。また、腐敗した食べ物に気づけなくなったり、火事やガスもれに気づかないなど、命に関わる危険を回避することもできなくなります。
嗅覚は大切な器官です。トラブルがあればしっかりと対処しましょう。